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「レオニー」法務担当 弁護士・近藤早利さんインタビュー (中編)

芸能人の離婚問題などを見ても、一回浮気をしたら慰謝料いくらなどと
細かいことまで決まっている契約社会のアメリカでは、
当然すべてが文書化されています。

片や、“なあなあ”文化の日本。
その日米合作で、一本の映画が製作されたのですから、
法務を担当する弁護士さんたちが頭を抱えることもあったことでしょう。


現在全国ロードショー中の映画「レオニー」の
法務を担当した第一中央法律事務所の
近藤早利先生、西尾優子先生、野村麻衣子先生に、
当ブログ編集長shioriとwakkiがインタビュー。
前編から続く中編です。




●文書契約社会と口頭社会のコントラスト

―― これは前代未聞というようなエピソードはありましたか?

近藤 仕事をする際の文化、契約に対する意識の問題は、本当に日本とアメリカでは違いがありますよね。
日本の映画界、テレビ界では信頼関係が重視されて、契約書で相手を縛る、ということに、あまり意識的ではありません。 
「こういう映画作るんだけど、500万でこれやってよ」と言われたら、「ああ、いいよ」で引き受けて、どんな仕事を何時間かけて、どのような水準でするか、みたいなことは細かく取り決めないのです。

そういうことを、細かく言い出すと、「お前、俺を信用しないのか」みたいな(笑)。
「俺はやる以上はきちっと仕事するから、拘束期間は何日で、使う機材はこれで、その時間を越えたらエキストラでこれだけもらわないと困る」みたいなことを言うと、アイツは固い奴だから使えない……って話になっちゃうみたいですよ。

ざっくりと「○○一式、いくら。」みたいな取り決めをして、相当オーバーワークを強いることになっても「ごめん、次の仕事で埋め合わせるから」という感じで流れているのが、平成22年現在、日本のエンターテインメント業界の実情です。

アメリカは、まるっきり逆で、ユニオン(労働組合)がしっかりしてるから、何時になったらもう絶対撮影はしない、とかね。無理無理延ばしてもせいぜい30分ぐらい。
出演者にもスタッフにも組合があって最低基準をちゃんと決めているから、それを踏襲しないと、映画を撮ること自体が禁止されてしまう厳しい文書契約社会です。

信頼関係に基づいて、ざっくりとした決め事だけをしておいて、みんな「いい映画」を作るために、時間とか労力とか度外視してがんばる。自分たちの仕事は「時間でいくら」で計れるものではないぞ。
そういう考え方が、映画に限らず、アートの仕事に携わっている方々には根強いように思います。それは、個人的には、とても美しいことだと思いますし、そうでなければ真にいいものはできないと思います。

けれど、日本も、どんどん契約社会になっていきつつあるし、エンタテインメント業界だけが、このままでいられるわけでもないでしょうね。

また、世界でもっとも契約を重視するアメリカとの合作ということになると、いろいろな面で、日本が契約社会でない、ということが浮き彫りになってきて、不都合もでてきてしまいます。


―― たとえば、どんなことでしょうか。

近藤 アメリカの契約文化との対比、ということでいうと、印象的なエピソードがあります。
レオニーの赤ちゃん時代、子ども時代、何人もの子役の方が演じてくれましたね。
あの子たちは日本のプロダクションから紹介してもらったのですが、子役との契約って、どうすればいいと思いますか?

未成年者がした契約の効力って完全ではないのです。親の同意がいる。あるいは親が代理して契約する必要がある。けど、アメリカの常識からすれば、それでも足りない。

「子供に払ったギャラを、親が勝手に使ったりできないようにする制度が日本にはあるか。ないとしたら、それで子役に不利益がない、ということはどうやって保証されるのか、弁護士の意見書をくれ」とか言われたりしました。

親子といえども別人格。ギャラは、未成年者の財産であるから、それを保護する制度が必要である。この点が、ないがしろにされると映画が完成しても上映が差し止められる可能性だってある。
よくも悪しくも、このことに象徴されるようなことは、日本でも進んで行かざるを得ないことです。

「いいものを作るためには、ごちゃごちゃ細かいことをいうな」という文化が、ある日、まったく思いもかけなかった方面から「待った! それは許さない」といわれてしまうかもしれないことは、勘定に入れておいた方がいい。


―― 膨大な業務のすべてはとても伺えませんが、
    争ったりトラブルになることもあったのでは?

近藤
 秘密保持義務がありますから、トラブルの詳細はお話しできませんけど、映画の出来に大きく関わる問題で、2つほど問題がありましたね。
1件は、松井監督が自ら最終決断をされて解決しました。もう一件は、私どもの事務所が前面に出て、先方も弁護士を立てて交渉をして解決しました。

松井監督は、撮影の合間に、あるいは撮影を終えてから、そういうことにもご苦労されていたんです。それでも撮影の現場では、そんな様子はみじんも見せずにおられて、本当にすごいことです。


●「レオニー」にエキストラで参加

―― そういう業務をこなしながら、近藤先生と野村先生は
    「レオニー」にエキストラで出演されてるんですね。
    野村さんはどんな役だったのですか?


野村 レオニーが日本に来てから扇子を買いに行くシーンで、扇子屋さんを訪ねている他のお客さんの役です。黒っぽい着物で、wakkiさんと対面して話をしています。


このシーンは、経理などの映画のデスクワークスタッフが
揃ってエキストラ出演しています。野村先生&wakkiもこの中に…


―― 扇子屋さんの売り子を演じたwakkiと共演ですね。
    もちろんエミリー・モ−ティマーと竹下景子さんとも共演ですが。
    実際に参加されてみて、いかがでしたか?

野村 楽しかったです。つくばのワープステーションに朝早く行って夕方までかかりましたけど、おもしろかったです。それから犬山で撮影の時は見学に行きました。

近藤 僕は犬山でもつくばでも、2ヵ所出てるんです。

wakki 近藤先生は、帝国ホテルのシーンでは完全に役を演じてましたね。


近藤 それは監督が気を遣ってくださったんでしょう。
もっとリラックスできるかと思ったんですけど、やっぱりちょっと緊張しました。もっと身体的に開放した感じで演技できるかと思ったんですが、できなかったです(笑)。


左側が近藤先生。帝国ホテルのシーンに注目!


藤江さん(編集部註/助監督)にこうやって……と演技指導されてそれをやったんだけれども、最後まで自分がぎくしゃくしてるなあと思いながらやってましたね。
背景みたいな役でああなんだから、ピンで映る人は大変だなあと思いました。


wakki  背景じゃないですよ。けっこう映ってますよね。 でも、普段激しく法律とか契約のことをメールし合ってる方たちが、つくばでみんな衣裳を着てカツラをつけて集合してるっていうのは、おもしろかったですね(笑)。


野村 会計士の先生とか、出資者であるレオニーファンドの北海道ベンチャー・キャピタルの社員の方とかも出てらっしゃいましたし。

―― そういうお話を伺ってから観ると、さらにた感慨深いものがありますね、「レオニー」は。


それぞれの先生方に、監督や「レオニー」の感想を伺う後編に続きます。

| shiori | 映画 『レオニー』 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
2010/12/09 3:01 AM posted by: shiori
実際にインタビューさせていただいたのは9月だったのですが、最大の目的である映画公開のための様々なイベントが目白押しで、
アップが遅くなってしまって申し訳ありません。

でも、映画を観てから読んだほうが絶対おもしろい内容だと思いますので、後編もどうぞお楽しみに!
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